Python と Java のどちらを学ぶか決めかねて、求人サイトで検索したことがあると思います。件数を見て安心した人も、逆に不安になった人もいます。
この記事は、その件数が何を数えているかを扱います。対象は中途採用で、在学中の新卒は含みません。
ここで決められるのは、どちらの言語を選ぶかではなく、何を材料にするかです。
検索件数が数えているもの
「未経験 Python」で検索すると、件数が表示されます。ただし、その数が仕事の数や会社の数と対応しているとは限りません。
理由は、求人票の書き方にあります。実際に掲載されている求人票の「開発環境・使用ツール・技術領域」欄には、こう書かれていることがあります。
Java、JavaScript、C、C++、C#、VB.NET、PHP、Python、Ruby、Go、TypeScript、React …(全27語)
この求人票には、Java も Python も Ruby も並んでいます。 掲載側がこれだけの語を書く理由は、検索で拾われるためです。
見出しがもっとはっきりしている例もあります。
【関連キーワード】ITエンジニア、Webエンジニア、システムエンジニア、プログラマー、SE、PG、ITコンサルタント、PM、PMO、Java、JavaScript、Python、PHP、Ruby、Go、TypeScript、React、AWS、Azure、AI、DX、クラウド、システム開発、Web開発、アプリ開発、要件定義、未経験歓迎、第二新卒歓迎、文系歓迎
こちらは職務の説明ですらありません。検索に引っかけるための語だと、掲載側が見出しで書いています。「未経験歓迎」という語そのものが並んでいることにも注意してください。読者が使う絞り込みの言葉が、掲載側の対策の対象になっています。
こうした求人票が混ざるため、件数のうち、応募先として意味のある分がどれだけかは分かりません。
なお、上の2件はどちらも Java を含んでいます。この書き方は Python に限った話ではありません。 未経験向けの求人票では、言語を問わず起きます。
求人票を開くと分かること
件数では分からなくても、1件ずつ開けば分かることがあります。見るところは3つです。
- 職種名に言語が入っているか。 「Pythonエンジニア」なのか、「ITエンジニア」なのか
- 言語がどう挙げられているか。 単独で書かれているか、複数言語の列挙の一部か
- その言語を何に使うと書いてあるか。 Web 開発か、データ分析か、自動化か、書いていないか
顧客先に常駐する形態では、求人票に並ぶ技術名がその会社の案件の総体にあたることがあります。応募する人が使う技術ではありません。どれを担当するかは配属で決まります。事業形態ごとの見方は 未経験からの就職活動 の「求人を見るときの観点」にまとめています。
つまり、求人票に Python と書いてあることと、採用された人が Python を書くことは、別のことです。
公的な職業訓練の案内は、検索対策の影響を受けない
求人票は掲載側が自由に書けます。一方、公的な職業訓練の募集案内は、科目名と時間数が決まった形で公開されます。同じ言葉を並べて検索に引っかける、ということが起きません。
2026年9月に開講する回で、東京都・神奈川県・愛知県・大阪府の委託訓練を確認しました。分かったのは次の3点です。
- Web 開発を名乗るコースの言語は、Java か PHP でした。 東京都の「AI活用React・Javaシステム(オンライン)科」は Java と Spring Boot と React、愛知県の「Webアプリ科」は PHP と Java です
- Python を含むコースもありますが、時間の重心はデータ側にあります。 大阪府の「Java・Python・スマホアプリ開発技術習得科」では、Python 関連の144時間のうち84時間が機械学習と資格対策です。Python が Web に触れるのは、Web プログラミング演習の中の一部にとどまります
- 同じ県の中でも、枠によって作りがまったく違います。 神奈川県の委託訓練「即戦力」は12科すべてが318時間で、デジタル分野で扱う言語は JavaScript までです。他の3都府県の6か月級(561〜681時間)の半分ほどにあたります。一方、同じ神奈川県の委託訓練には2年の「専門人材育成コース」があり、そちらの実技には「Pythonプログラミング」と「Webシステム開発基礎・応用」が並びます(定員は科ごとに8人)。同じ県でも、どの枠を見たかで結論が変わります
ひとつ注意があります。訓練で Python がデータ側に置かれていることは、データの仕事に未経験で入れることを意味しません。 カリキュラムは学ぶ側の入口の設計であって、採用の入口の広さとは別です。
ここで示しているのは求人の量ではなく、都道府県が民間に委託して実施する訓練が、Web 開発の入口をどう設計したかです。
見たのは委託訓練だけで、ポリテクセンターの施設内訓練や求職者支援訓練は確認していません。ある枠に開発のコースがなくても、その県で開発の訓練を受けられないという話ではありません。 神奈川県がその例です。訓練の内容は、都道府県・募集回・枠・受託した事業者で変わります。上の3点は、この4都府県のこの回で確認できた範囲です。
訓練の科名には Python が入る。求人の職種名には入らなかった
Python は道具としては、どこにでもありました。 読んだ28社のうち22社が、使用言語の列挙に Python を入れています。案件の例に Python が出てきた会社も2社ありました(工場向けの最適化、生成AI)。公的訓練の科目にも「Pythonプログラミング」「Python機械学習演習」が並びます。
公的訓練は、科名にも Python を出します。 東京都と大阪府では Java と並記でした(「Java&Pythonシステム開発科」「Java・Python・スマホアプリ開発技術習得科」)。愛知県では C と組んでいます(「ITエンジニア入門C・Python科」)。東京都の3か月の回には「Python と情報処理技術者科」があり、ここでは言語名は Python だけです。
一方、求人の側では違いました。
- 職種名が「Pythonエンジニア」だった求人票は、28社に1社もありません
- 研修の名前も同じです。「Java研修」「Javaプログラマー研修」はありましたが、Python の付いた研修名はありません
訓練の側は Python を科名にします。募集する側は、職種名にしていませんでした。
読者が踏むのはここです。Python を名乗る訓練で学び、Python で求人を検索すると、Python を看板にした求人ではなく、Python が列挙に混ざった求人が出てきます。 検索して Python がたくさん出るのは事実で、そこは疑わなくてかまいません。ただし、その求人が Python の仕事だという意味ではありません。
これは2026年7月に4回の検索で集めた28社と、4都府県の委託訓練で確認した範囲の話です。いま検索して同じ結果になるとは限りませんし、Python の求人がないという話でもありません。 自分が開いた求人票について、職種名、言語の挙げられ方、用途を分けて読んでください。
件数の代わりに見るもの
件数を外すと、使える材料は4つ残ります。
求人票の中身。 上の3つの観点で、まず3件開いてみてください。件数を眺めるより時間がかかりますが、分かることの量が違います。求人票のどの欄を見るかは 求人票のどこを読むか にまとめています。
訓練のカリキュラム表。 訓練を受けるかどうかに関わらず読む価値があります。科目名と時間数が公開されているので、その言語がどの分野に置かれているかが分かります。ただし、科名と中身はずれることがあります。 科名の語順と時間配分が一致しないこともありますし、C と Python だけを扱うコースの取得目標資格に、Java の検定が挙がっている例もあります。逆に、科名に言語が入っていなくても、科目名には言語が出てくることがあります(神奈川県の「AI・データサイエンス科」「IT・ゲームソフト科」は、科名に言語がありませんが、実技に「Pythonプログラミング」が入っています)。科名でも資格欄でもなく、科目名と時間数を見てください。
自分が作りたいものから逆算する。 作りたいものが Web アプリなら、その分野で使われている言語は求人票を見なくても調べられます。
自分がいた業界。 前職が IT 以外でも、その業界向けのシステムを作っている会社があります。業界名に「システム」「開発」を足して検索すると、件数は減ります。減ったぶん、1件ずつ開く手が届きます。ただし語が並んでいることが仕事の中身を保証しないのは、冒頭の節で見たとおりです。 絞り込みで決まるのは開く候補までで、何を作っている会社かは開いてから確かめてください。前職を応募書類でどう扱うかは 履歴書・職務経歴書のポイント にまとめています。
言語を変えても、残るものがある
ここまで読んで言語を変えようと考えた人には、それまでの数か月が無駄になるのかという問題が残ります。
言語を変えても残るものは、次のとおりです。
- 変数、条件分岐、繰り返し、関数といった基本の考え方
- アルゴリズムとデータ構造
- データベースと SQL
- Git によるバージョン管理
- 動かして確かめる、エラーを読む、といった進め方
残らないのは、その言語やフレームワークに固有の書き方です。実際、公的訓練でも複数言語を1つのコースで扱う例があります(東京都の「Java&Pythonシステム開発科」など)。
数か月ぶんが消えるわけではありません。ただし、件数だけを理由に乗り換える必要はありません。 迷うなら、作りたいもの、いま学んでいるカリキュラムの科目と時間配分、求人票を開いたときの担当業務の3つを照らして決めてください。乗り換えを繰り返すと、どれも動くものを作る手前で止まります。
この記事のまとめ
- 検索件数には、職の数とも会社の数とも対応しない分が混ざる
- 求人票に技術名が並ぶのは、検索で拾われるためのことがある。実物がある
- 「関連キーワード」として語を列挙する求人票がある。「未経験歓迎」も語として入る
- この書き方は Python に限らない。Java でも同じことが起きる
- 求人票は1件ずつ開けば分かる。職種名、言語の挙げられ方、用途の3つを見る
- 求人票に言語名があることと、その言語を使う仕事であることは別
- 委託訓練では、Web を名乗るコースの言語は Java か PHP だった。時間数が公開されている併修コースでは、Python 側の時間の過半がデータ側にあった
- 同じ県でも枠によって作りが違う。科名に言語がなくても、科目名には出てくることがある
- 28社のうち22社が使用言語に Python を挙げていた。ただし職種名と研修名に Python は出てこなかった
- 公的訓練は科名に Python を出す。訓練の側は看板にするが、募集する側は職種名にしていなかった
- ただしそれは、データの仕事が未経験に開いているという意味ではない
- 言語を変えても、基本の考え方、アルゴリズム、SQL、Git は残る
言語どうしを件数で比べることはできません。 同じ言葉で地域を比べるくらいなら参考になりますが、それも中身までは教えてくれません。開いて中身を読むか、カリキュラム表を見るか、作りたいものから逆算するか、自分がいた業界から絞るか。どれも件数を眺めるより手間がかかりますが、分かることが残ります。
求人票を1件ずつ読むときの観点は 求人票のどこを読むか、応募に踏み切る時期は どこまで学べば応募していいか、書類の作り方は 履歴書・職務経歴書のポイント にまとめています。